書式
#include <sys/prctl.h>
int prctl(int option, unsigned long arg2, unsigned long arg3,
unsigned long arg4, unsigned long arg5);
説明
prctl() の動作は最初の引き数によって決定される (この値は <linux/prctl.h> に定義されている)。 残りの引き数は最初の引き数によって変化する。 一番目の引き数として以下のものを指定できる:- PR_CAPBSET_READ (Linux 2.6.25 以降)
-
で指定されたケーパビリティが呼び出したスレッドのケーパビリティ バインディングセット (capability bounding set)
に含まれている場合、 (関数の結果として) 1 を返し、そうでない場合 0 を返す (ケーパビリティ定数は
<linux/capability.h> で定義されている)。 ケーパビリティバウンディングセットは、 execve(2)
を呼び出した際に、ファイルの許可 (permitted) ケーパビリティの中で そのプロセスが獲得できるケーパビリティを指示するものである。
arg2 に指定されたケーパビリティが有効でない場合、 呼び出しはエラー EINVAL で失敗する。
- PR_CAPBSET_DROP (Linux 2.6.25 以降)
-
呼び出したスレッドがケーパビリティ CAP_SETPCAP を持っている場合、 呼び出したスレッドのケーパビリティバウンディングセットから
arg2 で指定されたケーパビリティを外す。 呼び出したスレッドの子プロセスは変更後のバウンディングセットを 継承する。
呼び出したスレッドが CAP_SETPCAP を持っていない場合、呼び出しはエラー EPERM で失敗する。 arg2 に指定されたケーパビリティが有効でない場合、 EINVAL で失敗する。 ファイルケーパビリティがカーネルで有効になっていない場合 (この場合にはバウンディングセットがサポートされない)、 EINVAL で失敗する。
- PR_SET_CHILD_SUBREAPER (Linux 3.4 以降)
- If arg2 is nonzero, set the "child subreaper" attribute of the calling process; if arg2 is zero, unset the attribute. When a process is marked as a child subreaper, all of the children that it creates, and their descendants, will be marked as having a subreaper. In effect, a subreaper fulfills the role of init(1) for its descendant processes. Upon termination of a process that is orphaned (i.e., its immediate parent has already terminated) and marked as having a subreaper, the nearest still living ancestor subreaper will receive a SIGCHLD signal and be able to wait(2) on the process to discover its termination status.
- PR_GET_CHILD_SUBREAPER (Linux 3.4 以降)
- Return the "child subreaper" setting of the caller, in the location pointed to by (int *) arg2.
- PR_SET_DUMPABLE (Linux 2.3.20 以降)
- (Linux 2.3.20 以降) デフォルトの振る舞いではコアダンプを引き起こすようなシグナルを受信したときに、呼び出し元のプロセスでコアダンプを生成するかどうかを決定するフラグを設定する (通常このフラグは、デフォルトではセットされているが、 set-user-ID あるいは set-group-ID プログラムが実行されたり、 さまざまなシステムコールによってプロセスの UID や GID が操作されたときに クリアされる)。 2.6.12 以前のカーネルでは、 arg2 は 0 (プロセスはダンプ不可) あるいは 1 (プロセスはダンプ可能) の どちらかでなければならない。 2.6.13 から 2.6.17 までのカーネルでは、値 2 も認められていた。 この値を指定すると、通常はダンプされないバイナリが root だけが 読み込み可能な形でダンプされた。 セキュリティ上の理由から、この機能は削除された (proc(5) の /proc/sys/fs/suid_dumpable の説明も参照)。 ダンプ不可のプロセスを ptrace(2) PTRACE_ATTACH 経由で接続することはできない。
- PR_GET_DUMPABLE (Linux 2.3.20 以降)
- (Linux 2.3.20 以降) 呼び出し元プロセスにおけるダンプ可能フラグの 現在の状態を (関数の結果として) 返す。
- PR_SET_ENDIAN (Linux 2.6.18 以降、PowerPC のみ)
- 呼び出し元プロセスのエンディアン設定 (endian-ness) を arg2 で指定された値に設定する。 指定できる値は PR_ENDIAN_BIG, PR_ENDIAN_LITTLE, PR_ENDIAN_PPC_LITTLE (PowerPC 擬似リトルエンディアン) のいずれか一つである。
- PR_GET_ENDIAN (Linux 2.6.18 以降、PowerPC のみ)
- 呼び出し元プロセスのエンディアン設定 (endian-ness) を (int *) arg2 が指す場所に格納して返す。
- PR_SET_FPEMU (Linux 2.4.18 以降, 2.5.9, ia64 のみ)
- 浮動小数点エミュレーション (floating-point emulation) 制御ビットを arg2 で指定された値に設定する。 指定できる値は PR_FPEMU_NOPRINT (浮動小数点命令アクセスを黙って エミュレートする) か PR_FPEMU_SIGFPE (浮動小数点命令をエミュレートせず、 代わりに SIGFPE を送る) である。
- PR_GET_FPEMU (Linux 2.4.18 以降, 2.5.9, ia64 のみ)
- 浮動小数点エミュレーション制御ビットの値を (int *) arg2 が指す場所に格納して返す。
- PR_SET_FPEXC (Linux 2.4.21 および 2.5.32 以降、PowerPC のみ)
- 浮動小数点例外モード (floating-point exception mode) を arg2 で指定された値に設定する。 指定できるのは以下の値である: PR_FP_EXC_SW_ENABLE (FPEXC で浮動小数点例外を有効にする)、 PR_FP_EXC_DIV (0 除算)、 PR_FP_EXC_OVF (オーバーフロー)、 PR_FP_EXC_UND (アンダーフロー)、 PR_FP_EXC_RES (不正確な結果 (inexact result))、 PR_FP_EXC_INV (不正な命令 (invalid operation))、 PR_FP_EXC_DISABLED (浮動小数点例外を無効にする)、 PR_FP_EXC_NONRECOV (async nonrecoverable exception mode)、 PR_FP_EXC_ASYNC (async recoverable exception mode)、 PR_FP_EXC_PRECISE (precise exception mode)。
- PR_GET_FPEXC(Linux 2.4.21 および 2.5.32 以降、PowerPC のみ)
- 浮動小数点例外モードの値を (int *) arg2 が指す場所に格納して返す。
- PR_SET_KEEPCAPS (Linux 2.2.18 以降)
- スレッドの「ケーパビリティ保持」フラグを設定する。 このフラグは、スレッドの実 UID、実効 UID、保存 set-user-ID のうち少なくとも一つが 0 であった状態から、これら全てが 0 以外に変更されたとき、 スレッドの許可ケーパビリティ集合がクリアされるかどうかを決定する。 デフォルトでは、このような変更が行われた場合、許可ケーパビリティセットはクリアされる。「ケーパビリティ保持」フラグを設定すると、許可ケーパビリティセットはクリアされなくなる。 arg2 は 0 (許可ケーパビリティをクリアする) か 1 (許可ケーパビリティを保持する) の どちらかでなければならない。 (このような ID の変更が行われた場合、「ケーパビリティ保持」フラグの設定に関わらず、スレッドの実効ケーパビリティセットは常にクリアされる。) execve(2) が呼び出されると、「ケーパビリティ保持」フラグは 0 にリセットされる。
- PR_GET_KEEPCAPS (Linux 2.2.18 以降)
- 呼び出し元スレッドにおける「ケーパビリティ保持」フラグの 現在の状態を (関数の結果として) 返す。
- PR_SET_NAME (Linux 2.6.9 以降)
- 呼び出し元スレッドのプロセス名を (char *) arg2 が指す場所に格納された値を使って設定する。 名前は最大で 16 バイトであり、 それより少ないバイト数の場合はヌルで終端すべきである。 これは、 pthread_setname_np(3) で設定でき、 pthread_getname_np(3) で取得できるのと同じ属性である。 同様に、 tid が呼び出し元スレッドの ID の場合、 この属性は /proc/self/task/[tid]/comm 経由でもアクセス可能である。
- PR_GET_NAME (Linux 2.6.11 以降)
- 呼び出し元スレッドの名前を (char *) arg2 が指す場所に格納して返す。 バッファは最大で 16 バイトを格納できるようにすべきである。 返される文字列は、長さが 16 バイトより短い場合はヌル終端される。
- PR_SET_NO_NEW_PRIVS (Linux 3.5 以降)
-
Set the calling process's no_new_privs bit to the value in arg2. With
no_new_privs set to 1, execve(2) promises not to grant privileges to
do anything that could not have been done without the execve(2) call
(for example, rendering the set-user-ID and set-group-ID permission bits,
and file capabilities non-functional). Once set, this bit cannot be unset.
The setting of this bit is inherited by children created by fork(2) and
clone(2), and preserved across execve(2).
詳しい情報は、カーネルソースファイル Documentation/prctl/no_new_privs.txt を参照。
- PR_GET_NO_NEW_PRIVS (Linux 3.5 以降)
- Return (as the function result) the value of the no_new_privs bit for the current process. A value of 0 indicates the regular execve(2) behavior. A value of 1 indicates execve(2) will operate in the privilege-restricting mode described above.
- PR_SET_PDEATHSIG (Linux 2.1.57 以降)
- 親プロセス死亡シグナル (parent process death signal) を arg2 に設定する (設定できるシグナル値の範囲は 1..maxsig であり、0 は通知の解除である)。 呼び出し元プロセスの親プロセスが死んだ際に、ここで設定した値が シグナルとして通知される。この値は fork(2) の子プロセスでは解除される。 (Linux 2.4.36 以降および 2.6.23 以降では) set-user-ID もしくは set-group-ID されたバイナリを実行した場合にも、このフラグは解除される。この値は execve(2) の前後で保持される。
- PR_GET_PDEATHSIG (Linux 2.3.15 以降)
- 親プロセス死亡シグナルの現在の値を (int *) arg2 が指す場所に格納して返す。
- PR_SET_PTRACER (Linux 3.4 以降)
-
This is meaningful only when the Yama LSM is enabled and in mode 1
("restricted ptrace", visible via /proc/sys/kernel/yama/ptrace_scope).
When a "ptracer process ID" is passed in arg2, the caller is declaring
that the ptracer process can ptrace(2) the calling process as if it were
a direct process ancestor. Each PR_SET_PTRACER operation replaces the
previous "ptracer process ID". Employing PR_SET_PTRACER with arg2 set
to 0 clears the caller's "ptracer process ID". If arg2 is
PR_SET_PTRACER_ANY, the ptrace restrictions introduced by Yama are
effectively disabled for the calling process.
詳しい情報は、カーネルソースファイル Documentation/security/Yama.txt を参照。
- PR_SET_SECCOMP (Linux 2.6.23 以降)
-
呼び出したスレッドのセキュアコンピューティング (seccomp) モードを設定する。 seccomp
モードは利用できるシステムコールを制限するものである。 seccomp モードは arg2 で指定できる (seccomp 定数は
<linux/seccomp.h> で定義されている)。
arg2 を SECCOMP_MODE_STRICT に設定すると、 そのスレッドが呼び出しを許可されるシステムコールは read(2), write(2), _exit(2), sigreturn(2) だけになる。 それ以外のシステムコールを呼び出すと、シグナル SIGKILL が配送される。 パイプやソケットから読み込んだ、 信頼できないバイトコードを実行する必要がある大量の演算を行うアプリケーションにおいて、 strict secure computing モードは役立つ。 この操作は利用できるのは、 カーネルが CONFIG_SECCOMP を有効にして作成されている場合だけである。
arg2 を SECCOMP_MODE_FILTER (Linux 3.5 以降) に設定すると、 許可されるシステムコールは arg3 で渡された Berkeley Packet Filter へのポインターで定義される。 この引き数は struct sock_fprog へのポインターである。 これは任意のシステムコールやシステムコール引き数をフィルタリングするために設計された。 このモードはカーネルで CONFIG_SECCOMP_FILTER が有効になっている場合にのみ利用可能である。
SECCOMP_MODE_FILTER フィルターで fork(2) が許可されている場合、 seccomp モードは fork(2) で作成された子プロセスに継承される。 execve(2) が許可されている場合、 seccomp モードは execve(2) の前後で維持される。 フィルターで prctl() コールが許可されている場合、 追加でフィルターが定義され、 これらのフィルターは許可されないものが見つかるまで指定された順序で実行される。
詳しい情報は、カーネルソースファイル Documentation/prctl/seccomp_filter.txt を参照。
- PR_GET_SECCOMP (Linux 2.6.23 以降)
- 呼び出したスレッドの secure computing モードを (関数の結果として) 返す。 呼び出したスレッドが secure computing モードでなかった場合、 この操作は 0 を返す。 呼び出したスレッドが secure computing モードの場合、 prctl() を呼び出すとシグナル SIGKILL がそのプロセスに送信される。 呼び出したスレッドがフィルタモードで、 このシステムコールが seccomp フィルタにより許可されている場合、 2 を返す。 この操作が利用できるのは、カーネルが CONFIG_SECCOMP を有効にして作成されている場合だけである。
- PR_SET_SECUREBITS (Linux 2.6.26 以降)
- 呼び出したスレッドの "securebits" フラグを arg2 で渡された値に設定する。 capabilities(7) 参照。
- PR_GET_SECUREBITS (Linux 2.6.26 以降)
- 呼び出したスレッドの "securebits" フラグを (関数の結果として) 返す。 capabilities(7) 参照。
- PR_SET_THP_DISABLE (Linux 3.15 以降)
- 呼び出したスレッドの "THP disable" (THP 無効) フラグの状態を設定する。 arg2 が 0 以外の場合、フラグは有効になり、そうでない場合はクリーンされる。 このフラグを設定する方法により、 コードを変更できなかったり madvise(2) の malloc hook をが有効ではないジョブ (この方法は静的に割り当てられたデータには有効ではない)に対して、 transparent huge pages を無効にする手段が提供される。 "THP disable" フラグの設定は fork(2) で作成された子プロセスに継承され、 execve の前後で維持される。
- PR_GET_THP_DISABLE (Linux 3.15 以降)
- 呼び出し元スレッドの "THP disable" フラグの現在の設定を (関数の結果として) 返す。フラグがセットされている場合は 1 が、セットされていない場合は 0 が返る。
- PR_GET_TID_ADDRESS (Linux 3.5 以降)
- set_tid_address(2) や clone(2) CLONE_CHILD_CLEARTID フラグで設定された clear_child_tid を取得し、 (int **) arg2 が指す場所に格納して返す。 この機能はカーネルが CONFIG_CHECKPOINT_RESTORE オプションを有効にして作成されている場合にのみ利用できる。
- PR_SET_TIMERSLACK (Linux 2.6.28 以降)
-
Set the current timer slack for the calling thread to the nanosecond value
supplied in arg2. If arg2 is less than or equal to zero, reset the
current timer slack to the thread's default timer slack value. The timer
slack is used by the kernel to group timer expirations for the calling
thread that are close to one another; as a consequence, timer expirations
for the thread may be up to the specified number of nanoseconds late (but
will never expire early). Grouping timer expirations can help reduce system
power consumption by minimizing CPU wake-ups.
The timer expirations affected by timer slack are those set by select(2), pselect(2), poll(2), ppoll(2), epoll_wait(2), epoll_pwait(2), clock_nanosleep(2), nanosleep(2), and futex(2) (and thus the library functions implemented via futexes, including pthread_cond_timedwait(3), pthread_mutex_timedlock(3), pthread_rwlock_timedrdlock(3), pthread_rwlock_timedwrlock(3), and sem_timedwait(3)).
Timer slack is not applied to threads that are scheduled under a real-time scheduling policy (see sched_setscheduler(2)).
Each thread has two associated timer slack values: a "default" value, and a "current" value. The current value is the one that governs grouping of timer expirations. When a new thread is created, the two timer slack values are made the same as the current value of the creating thread. Thereafter, a thread can adjust its current timer slack value via PR_SET_TIMERSLACK (the default value can't be changed). The timer slack values of init (PID 1), the ancestor of all processes, are 50,000 nanoseconds (50 microseconds). The timer slack values are preserved across execve(2).
- PR_GET_TIMERSLACK (Linux 2.6.28 以降)
- 呼び出し元スレッドの現在のタイマーのスラック値を (関数の結果として) 返す。
- PR_SET_TIMING (Linux 2.6.0-test4 以降)
- (通常の、伝統的に使われてきた) 統計的なプロセスタイミングを使用するか、 正確なタイムスタンプに基づくプロセスタイミングを使用するかを設定する。 arg2 に指定できる値は PR_TIMING_STATISTICAL か PR_TIMING_TIMESTAMP である。 PR_TIMING_TIMESTAMP は現在のところ実装されていない (このモードに設定しようとするとエラー EINVAL が起こることだろう)。
- PR_GET_TIMING (Linux 2.6.0-test4 以降)
- 現在使用中のプロセスタイミングを決める方法を (関数の結果として) 返す。
- PR_TASK_PERF_EVENTS_DISABLE (Linux 2.6.31 以降)
- 呼び出したプロセスに接続されたすべての性能カウンターを無効にする。 カウンターがこのプロセスにより作成されたか他のプロセスにより作成されたかは関係ない。 呼び出したプロセスが他のプロセス用に作成した性能カウンターは影響を受けない。 性能カウンターの詳細については Linux カーネルソースの tools/perf/design.txt を参照。
- 以前は PR_TASK_PERF_COUNTERS_DISABLE と呼ばれていた。 Linux 2.6.32 で名前が変更された (数値は同じままである)。
- PR_TASK_PERF_EVENTS_ENABLE (Linux 2.6.31 以降)
- PR_TASK_PERF_EVENTS_DISABLE の逆。 呼び出したプロセスに接続された性能カウンターを有効にする。
- 以前は PR_TASK_PERF_COUNTERS_ENABLE と呼ばれていた。 Linux 2.6.32 で名前が変更された。
- PR_SET_TSC (Linux 2.6.26 以降, x86 のみ)
- そのプロセスがタイムスタンプ・カウンタを読み出せるかを決定する フラグの状態を設定する。 読み出しを許可する場合は arg2 に PR_TSC_ENABLE を、そのプロセスがタイムスタンプ・カウンタを読み出そうとした際に SIGSEGV を発生させる場合には PR_TSC_SIGSEGV を渡す。
- PR_GET_TSC (Linux 2.6.26 以降, x86 のみ)
- そのプロセスがタイムスタンプ・カウンタを読み出せるかを決定する フラグの状態を (int *) arg2 が指す場所に格納して返す。
- PR_SET_UNALIGN
- (ia64 では Linux 2.3.48 以降; parisc では Linux 2.6.15 以降; PowerPC では Linux 2.6.18 以降; Alpha では Linux 2.6.22 以降; これらのアーキテクチャのみ) unaligned アクセス制御ビットを arg2 で指定された値に設定する。 指定できる値は PR_UNALIGN_NOPRINT (unaligned なユーザアクセスを黙って 修正する) か PR_UNALIGN_SIGBUS (unaligned なユーザアクセスがあった場合 SIGBUS を生成する) である。
- PR_GET_UNALIGN
- (バージョンとアーキテクチャの情報は PR_SET_UNALIGN 参照) unaligned アクセス制御ビットの値を (int *) arg2 が指す場所に格納して返す。
- PR_MCE_KILL (Linux 2.6.32 以降)
- Set the machine check memory corruption kill policy for the current thread. If arg2 is PR_MCE_KILL_CLEAR, clear the thread memory corruption kill policy and use the system-wide default. (The system-wide default is defined by /proc/sys/vm/memory_failure_early_kill; see proc(5).) If arg2 is PR_MCE_KILL_SET, use a thread-specific memory corruption kill policy. In this case, arg3 defines whether the policy is early kill (PR_MCE_KILL_EARLY), late kill (PR_MCE_KILL_LATE), or the system-wide default (PR_MCE_KILL_DEFAULT). Early kill means that the thread receives a SIGBUS signal as soon as hardware memory corruption is detected inside its address space. In late kill mode, the process is killed only when it accesses a corrupted page. See sigaction(2) for more information on the SIGBUS signal. The policy is inherited by children. The remaining unused prctl() arguments must be zero for future compatibility.
- PR_MCE_KILL_GET (Linux 2.6.32 以降)
- Return the current per-process machine check kill policy. All unused prctl() arguments must be zero.
- PR_SET_MM (Linux 3.3 以降)
-
呼び出したプロセスのカーネルメモリマップディスクリプタのフィールドを変更する。 これらのフィールドは通常カーネルと動的リンカーにより設定される
(詳しい情報は ld.so を参照)。 通常のアプリケーションはこの機能を利用すべきではない。 しかしながら、自分を書き換えるプログラムなど、
プログラムが自分自身のメモリマップを変更するのが有用な場面もある。 この機能はカーネルが CONFIG_CHECKPOINT_RESTORE
オプションを有効にして作成されている場合にのみ利用できる。 呼び出したプロセスは CAP_SYS_RESOURCE
ケーパビリティを持っていなければならない。 arg2 の値には以下のいずれかを指定し、 arg3 でそのオプションの新しい値を指定する。
-
- PR_SET_MM_START_CODE
- プログラムテキストを実行できるアドレスの上限を設定する。 対応するメモリ領域は読み出し可能で実行可能でなければならないが、 書き込み可能だったり共有可能だったりしてはならない (詳しい情報は mprotect(2) と mmap(2) 参照)。
- PR_SET_MM_END_CODE
- プログラムテキストを実行できるアドレスの下限を設定する。 対応するメモリ領域は読み出し可能で実行可能でなければならないが、 書き込み可能だったり共有可能だったりしてはならない。
- PR_SET_MM_START_DATA
- 初期化済データや未初期化 (bss) データを配置する領域のアドレス上限を指定する。 対応するメモリ領域は読み書き可能でなければならないが、 実行可能だったり共有可能だったりしてはならない。
- PR_SET_MM_END_DATA
- 初期化済データや未初期化 (bss) データを配置する領域のアドレス下限を指定する。 対応するメモリ領域は読み書き可能でなければならないが、 実行可能だったり共有可能だったりしてはならない。
- PR_SET_MM_START_STACK
- スタックの開始アドレスを設定する。 対応するメモリ領域は読み書き可能でなければならない。
- PR_SET_MM_START_BRK
- brk(2) コールで拡張できるプログラムのヒープ領域のアドレス上限を設定する。 このアドレスは、プログラムの現在のデータセグメントの最終アドレスより大きくなければならない。 また、 変更後のヒープとデータセグメントのサイズを合わせたサイズが RLIMIT_DATA リソースリミットを超えることはできない (setrlimit(2) 参照)。
- PR_SET_MM_BRK
- 現在の brk(2) 値を設定する。 このアドレスの要件は PR_SET_MM_START_BRK オプションと同じである。
以下のオプションは Linux 3.5 以降で利用できる。
- PR_SET_MM_ARG_START
- プログラムのコマンドラインを配置するアドレスの上限を設定する。
- PR_SET_MM_ARG_END
- プログラムのコマンドラインを配置するアドレスの下限を設定する。
- PR_SET_MM_ENV_START
- プログラムの環境情報 (environment) を配置するアドレスの上限を設定する。
- PR_SET_MM_ENV_END
- プログラムの環境情報 (environment) を配置するアドレスの下限を設定する。
- PR_SET_MM_ARG_START, PR_SET_MM_ARG_END, PR_SET_MM_ENV_START, PR_SET_MM_ENV_END で指定されるアドレスはプロセスのスタック領域に属している必要がある。 したがって、これらのメモリ領域は読み書き可能でなければならない。 また、 (カーネル設定によっては) MAP_GROWSDOWN 属性がセットされていなければならない (mmap(2) 参照)。
- PR_SET_MM_AUXV
- 新しい補助ベクトル (auxiliary vector) を設定する。 arg3 引き数はベクトルのアドレスを指定し、 arg4 はベクトルのサイズを指定する。
- PR_SET_MM_EXE_FILE
- /proc/pid/exe シンボリックリンクを arg3 引き数で渡された新しい実行可能なファイルディスクリプタを指すシンボリックリンクで置き換える。 ファイルディスクリプタは通常の open(2) コールで取得すべきである。
- シンボリックリンクを変更するには、 既存の実行可能なメモリ領域のすべてをアンマップする必要がある。これにはカーネル自身が作成した領域も含まれる (例えば、カーネルは通常 ELF .text セクションに少なくとも一つの実行可能なメモリ領域を作成する)。
- 二つ目の制限は、このような変更はプロセスの生存期間で一度だけ行うことができるという点である。 一度変更を行った後で変更を行おうとすると拒否される。 この動作は、 システム管理者が、 システムで動作するすべてのプロセスが行う、 普通でないシンボリックリンクの変更を監視するのを楽にする。
-
返り値
成功すると、 PR_GET_DUMPABLE, PR_GET_KEEPCAPS, PR_GET_NO_NEW_PRIVS, PR_GET_THP_DISABLE, PR_CAPBSET_READ, PR_GET_TIMING, PR_GET_TIMERSLACK, PR_GET_SECUREBITS, PR_MCE_KILL_GET, PR_GET_SECCOMP は上述の負でない値を返す (なお、PR_GET_SECCOMP は返らない場合もある)。 option が他の値の場合は成功時に 0 を返す。 エラーの場合、-1 を返し、 errno に適切な値を設定する。エラー
- EFAULT
- arg2 が不正なアドレスである。
- EINVAL
- option の値が理解できない。
- EINVAL
- option が PR_MCE_KILL, PR_MCE_KILL_GET, PR_SET_MM のいずれかで、かつ未使用の prctl() 引き数に 0 が指定されていなかった。
- EINVAL
- arg2 が指定された option で有効な値ではない。
- EINVAL
- option が PR_SET_SECCOMP か PR_GET_SECCOMP だが、カーネルが CONFIG_SECCOMP を有効にして作成されていなかった。
- EINVAL
-
option が PR_SET_MM で、以下のいずれかが真である。
-
- *
- arg4 が arg5 で 0 以外である。
- *
- arg3 が TASK_SIZE よりも大きい (TASK_SIZE はこのアーキテクチャーでユーザー空間アドレススペースの最大サイズである)。
- *
- arg2 が PR_SET_MM_START_CODE, PR_SET_MM_END_CODE, PR_SET_MM_START_DATA, PR_SET_MM_END_DATA, PR_SET_MM_START_STACK のどれかで、対応するメモリ領域のアクセス許可が要件を満たしていない。
- *
- arg2 が PR_SET_MM_START_BRK か PR_SET_MM_BRK で、 arg3 データセグメントの末尾と同じかそれより前か、 arg3 に RLIMIT_DATA リソースリミットを超えてしまうような値が指定されている。
-
- EINVAL
- option が PR_SET_PTRACER で arg2 が 0, PR_SET_PTRACER_ANY, 既存プロセスの PID のいずれでもない。
- EINVAL
- option が PR_SET_PDEATHSIG で、 arg2 で指定された値は無効なシグナル番号である。
- EINVAL
- option が PR_SET_DUMPABLE で、 arg2 が SUID_DUMP_DISABLE でも SUID_DUMP_USER でもない。
- EINVAL
- option が PR_SET_TIMING で、 arg2 が PR_TIMING_STATISTICAL ではない。
- EINVAL
- option が PR_SET_NO_NEW_PRIVS で、 arg2 が 1 以外か、 arg3, arg4, arg5 のどれかが 0 ではない。
- EINVAL
- option が PR_GET_NO_NEW_PRIVS で、 arg2, arg3, arg4, arg5 のどれかが 0 ではない。
- EINVAL
- option が PR_SET_THP_DISABLE で arg3, arg4, arg5 のどれかが 0 ではない。
- EINVAL
- option が PR_GET_THP_DISABLE で arg2, arg3, arg4, arg5 のいずれが 0 ではない。
- EPERM
- option が PR_SET_SECUREBITS で、呼び出し元がケーパビリティ CAP_SETPCAP を持っていない。 または、"locked" フラグを解除しようとした。 または、locked フラグがセットされているフラグをセットしようとした (capabilities(7) 参照)。
- EPERM
- option が PR_SET_KEEPCAPS で、呼び出し元のフラグ SECURE_KEEP_CAPS_LOCKED がセットされている (capabilities(7) 参照)。
- EPERM
- option が PR_CAPBSET_DROP で、呼び出し元がケーパビリティ CAP_SETPCAP を持っていない。
- EPERM
- option が PR_SET_MM で、呼び出し元がケーパビリティ CAP_SYS_RESOURCE を持っていない。
- EACCES
- option が PR_SET_MM、かつ arg3 が PR_SET_MM_EXE_FILE で、ファイルが実行可能ではない。
- EBUSY
- option が PR_SET_MM で、 arg3 が PR_SET_MM_EXE_FILE で、 /proc/pid/exe シンボリックリンクを変更しようとしたが、 禁止されている。
- EBADF
- option が PR_SET_MM で、 arg3 が PR_SET_MM_EXE_FILE で、 arg4 で渡されたファイルディスクリプタが有効ではない。
バージョン
prctl() システムコールは Linux 2.1.57 で導入された。準拠
このコールは Linux 特有である。 IRIX には prctl() システム・コールがあるが (MIPS アーキテクチャにおいて irix_prctl として Linux 2.1.44 で同様に導入された)、 そのプロトタイプはptrdiff_t prctl(int option, int arg2, int arg3);
である。ユーザー当りのプロセス最大数を取得するオプション、 プロセスの使用できる最大プロッサー数を取得するオプション、 現在特定のプロセスが停止(block)させられているかどうか調べるオプション、 スタックサイズの最大値の取得や設定を行なうオプションなどがある。
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.65 の一部である。 プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。