udp(7) IPv4 の ユーザーデータグラムプロトコル

書式

#include <sys/socket.h>
#include <netinet/in.h>
#include <netinet/udp.h>

udp_socket = socket(AF_INET, SOCK_DGRAM, 0);

説明

これは RFC 768 で記述されている User Datagram Protocol の実装である。 UDP はコネクションレスの、信頼性の低いデータパケットサービスである。 パケットは到着前に並び替えられたり複製されたりする。 UDP は転送エラーを検出するためにチェックサムを生成・チェックする。

UDP ソケットが生成されるとき、 ローカルアドレスやリモートアドレスは指定されない。 正しい行き先アドレスを引数として sendto(2) や sendmsg(2) を呼べば、データグラムはただちに送信される。 ソケットに対して connect(2) を呼ぶと、デフォルトの行き先アドレスが設定され、 send(2) や write(2) を使って、行き先アドレスの指定なしにデータグラムを送信できるようになる。 この場合でも、行き先アドレスを sendto(2) や sendmsg(2) に渡せば、デフォルト以外のアドレスに送信可能である。 パケットを受信するために、まずソケットを bind(2) を用いてローカルなアドレスにバインドさせることもできる。 そうでない場合は、ソケット層は自動的に /proc/sys/net/ipv4/ip_local_port_range で定義されている範囲の外で空いているローカルなポートを割り当て、 ソケットを INADDR_ANY にバインドする。

受信動作はパケットを一つだけ返す。渡したバッファよりもパケットが 小さければ、そのパケットの大きさのデータだけが返される。 逆にバッファよりも大きい場合はパケットは丸められ、 MSG_TRUNC フラグがセットされる。 MSG_WAITALL はサポートしていない。

IP オプションは、 ip(7) に記述されているソケットオプションを用いて読み書きできる。 これらは適切な /proc パラメータが有効な場合に限ってカーネルによって処理される (しかし無効になっている場合でもユーザーには渡される)。 ip(7) を参照のこと。

MSG_DONTROUTE フラグが送信時にセットされている場合には、 行き先アドレスはローカルなインターフェースアドレスから 参照できなければならない。パケットはそのインターフェースにしか送られない。

デフォルトでは、Linux の UDP は Path MTU Discovery を行う。 つまり、カーネルは特定の宛先 IP アドレスの MTU (Maximum Transmission Unit; 最大転送単位) を記録し、UDP パケットの書き込みが MTU を超えた場合 EMSGSIZE を返す。 EMSGSIZE を返された場合、アプリケーションはパケットサイズを小さくすべきである。 ソケットオプション IP_MTU_DISCOVER または /proc/sys/net/ipv4/ip_no_pmtu_disc ファイルを使って Path MTU Discovery を無効にすることもできる (詳細は ip(7) を参照)。 Path MTU Discovery を無効にした場合は、パケットサイズが インタフェースの MTU よりも大きいと UDP はそのパケットを フラグメント化して送出する。 しかしながら、性能と信頼性の理由から Path MTU Discovery を 無効にするのは推奨できない。

アドレスのフォーマット

UDP は IPv4 の sockaddr_in アドレスフォーマットを用いる。これは ip(7) に記述されている。

エラー処理

致命的なエラーは、たとえソケットが接続されていなくても、 すべてエラー戻り値としてユーザーに渡される。 これにはネットワークから受け取る非同期エラーも含まれる。 同じソケットを使って送信した昔のパケットに関するエラーを受け取るかもしれない。 この振る舞いは他の BSD ソケットの実装の多くとは異なる。 これらではソケットが接続されていない場合はエラーを全く返さない。 Linux の振る舞いは RFC 1122 での指定に従ったものである。

Linux 2.0 と 2.2 では、古いコードとの互換性のために、 SO_BSDCOMPAT SOL_SOCKET オプションを設定すれば、ソケットが接続されている 場合に限ってリモートのエラーを受信するようにできた (EPROTOEMSGSIZE を除く)。 ローカルで生成されたエラーは常に渡される。 このソケットオプションのサポートはそれ以降のバージョンの Linux で 削除された。詳細は socket(7) を参照。

IP_RECVERR オプションが有効になっていると、 すべてのエラーはソケットのエラーキューに保存される。 これは MSG_ERRQUEUE フラグをセットして recvmsg(2) を呼べば受信できる。

/proc インタフェース

システム全体の UDP パラメータ設定には、 /proc/sys/net/ipv4/ ディレクトリ内のファイルの読み書きでアクセスできる。
udp_mem (Linux 2.6.25 以降)
これは 3 つの整数からなるベクトル値で、 UDP の全ソケットのキューで利用可能なページ数を制御する。
min
このページ数より少なければ、UDP はそのメモリ使用に関して 干渉されない。 UDP に割り当てられたメモリ総量がこの値を超過すると、 UDP はメモリ使用量を調整し始める。
pressure
この値は tcp_mem の形式 (tcp(7) 参照) と合わせるために導入された
max
UDP の全ソケットのキューで利用可能なページ数。
これらの 3 つの値のデフォルト値は、 ブート時に利用可能なメモリ総量から計算される。
udp_rmem_min (integer; デフォルト値: PAGE_SIZE; Linux 2.6.25 以降)
メモリ使用量の調整中に、UDP ソケットが使用できる受信バッファの最小値 (バイト単位)。 UDP の全ソケットのページ使用量の合計が udp_mem pressure を超過している場合であっても、 各 UDP ソケットはデータの受信にこのサイズ分だけは使用することができる。
udp_wmem_min (integer; デフォルト値: PAGE_SIZE; Linux 2.6.25 以降)
メモリ使用量の調整中に、UDP ソケットが使用できる送信バッファの最小値 (バイト単位)。 UDP の全ソケットのページ使用量の合計が udp_mem pressure を超過している場合であっても、 各 UDP ソケットはデータの送信にこのサイズ分だけは使用することができる。

ソケットオプション

UDP ソケットオプションを設定または取得するには、 取得には getsockopt(2) を、設定には setsockopt(2) をオプションレベル引数に IPPROTO_UDP を指定して呼び出す。 注釈がない限り、 optvalint へのポインタである。
UDP_CORK (Linux 2.5.44 以降)
このオプションが指定されると、このソケットの全てのデータ出力は 一つのデータグラムに蓄積され、このオプションが無効化された時に 送信される。 このオプションは移植性を考慮したコードでは用いるべきではない。

ioctl

以下に示す ioctl は ioctl(2) を使ってアクセスできる。 正しい文法は以下の通り。

int value;
error = ioctl(udp_socket, ioctl_type, &value);
FIONREAD (SIOCINQ)
整数へのポインタを引き数に取り、そのポインタに、次の処理待ちのデータグラムの サイズをバイト単位で返す。処理待ちのデータグラムがない場合は 0 を返す。 警告: FIONREAD を使った場合、処理待ちのデータグラムがない場合と、 次の処理待ちデータグラムが 0 バイトのデータの場合を区別することができない。 この両者を区別したい場合は、select(2), poll(2), epoll(7) を使う方が安全である。
TIOCOUTQ (SIOCOUTQ)
ローカル送信キューにあるデータサイズをバイト単位で返す。 Linux 2.4 以上でのみ対応している。

さらに、 ip(7) と socket(7) で述べられている全ての ioctl も対応している。

エラー

socket(7) や ip(7) に記述されている全てのエラーが、 UDP ソケットの送受信で返される可能性がある。
ECONNREFUSED
行き先アドレスに関連づけられている受信者がいない。 これは以前のパケットがそのパケットを 上書き送信してしまっているからであることが多い。

バージョン

IP_RECVERR は Linux 2.2 の新しい機能である。

この文書について

この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.65 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。