rtnetlink(7) Linux IPv4 ルーティングソケット

書式

#include <asm/types.h>
#include <linux/netlink.h>
#include <linux/rtnetlink.h>
#include <sys/socket.h>

rtnetlink_socket = socket(AF_NETLINK, int socket_type, NETLINK_ROUTE);

説明

rtnetlink はカーネルのルーティングテーブルを読んだり変更したり するためのものである。これはカーネルが内部のサブシステムと 通信するためにも用いられているが、それはここでは記述しない。 この man ページではユーザー空間のプログラムとの通信に関してのみ述べる。 ネットワーク経路・IP アドレス・リンクパラメータ・ 近傍設定 (neighbor setup)・キューイングルール (queueing dicipline)・ トラフィッククラス・パケットのクラス分類などが、すべて NETLINK_ROUTE ソケットを通して制御できる。 rtnetlink は netlink メッセージをベースにしている。詳細は netlink(7) を見ること。

ルーティング属性

rtnetlink メッセージには、初期ヘッダの後に付加的な属性を 持つものがある。

struct rtattr {
    unsigned short rta_len;    /* Length of option */
    unsigned short rta_type;   /* Type of option */
    /* Data follows */
};

これらの属性の操作は、 RTA_* マクロか libnetlink のみを使って行うべきである。 rtnetlink(3) を見よ。

メッセージ

rtnetlink は (標準的な netlink メッセージに加えて) 以下のメッセージタイプから構成される。
RTM_NEWLINK, RTM_DELLINK, RTM_GETLINK
指定したネットワークインターフェースの情報を、生成・削除・取得する。 これらのメッセージは ifinfomsg 構造体と、それに続いていくつかの rtattr 構造体を伴う。

struct ifinfomsg {
    unsigned char  ifi_family; /* AF_UNSPEC */
    unsigned short ifi_type;   /* Device type */
    int            ifi_index;  /* Interface index */
    unsigned int   ifi_flags;  /* Device flags  */
    unsigned int   ifi_change; /* change mask */
};

ifi_flags はデバイスのフラグである。 netdevice(7) を参照。 ifi_index は他と重ならないインターフェースの index である (Linux 3.7 以降では、 RTMGRP_LINK メッセージで 0 以外の値を指定することができ、そのため指定した ifindex でリンクを作成できる)。 ifi_change は将来の利用のために予約されており、常に 0xFFFFFFFF にセットすべきである。

ルーティング属性
rta_type値の型説明

IFLA_UNSPEC-指定されていない。
IFLA_ADDRESShardware addressインターフェース L2 アドレス
IFLA_BROADCASThardware addressL2 ブロードキャストアドレス
IFLA_IFNAMEasciiz stringデバイス名
IFLA_MTUunsigned intデバイスの MTU
IFLA_LINKintリンクタイプ
IFLA_QDISCasciiz stringキューイングのルール
IFLA_STATS 下記参照 インターフェースの統計

IFLA_STATS の値の型は struct rtnl_link_stats (Linux 2.4 以前では struct net_device_stats) である。

RTM_NEWADDR, RTM_DELADDR, RTM_GETADDR
インターフェースの IP アドレスの情報を追加・削除・取得する。 Linux 2.2 では、一つのインターフェースに複数の IP アドレスを 保持させることができ、これは 2.0 の別名デバイスの概念を置き換える。 Linux 2.2 では、これらのメッセージは IPv4 と IPv6 の両方のアドレスをサポートしている。 これらは ifaddrmsg 構造体を伴う。そのあとに rtattr ルーティング属性が続くこともある。

struct ifaddrmsg {
    unsigned char ifa_family;    /* Address type */
    unsigned char ifa_prefixlen; /* Prefixlength of address */
    unsigned char ifa_flags;     /* Address flags */
    unsigned char ifa_scope;     /* Address scope */
    int           ifa_index;     /* Interface index */
};

ifa_family はアドレスファミリーのタイプである (現在は AF_INET または AF_INET6)。 ifa_prefixlen はアドレスのアドレスマスクの長さである (IPv4 のように、 そのファミリーで定義されている場合)。 ifa_scope はアドレスのスコープである。 ifa_index はアドレスが関連づけられているインターフェースの index である。 ifa_flags はフラグワードで、 二つめのアドレス (古い別名インターフェース) の場合は IFA_F_SECONDARY に、永続的なアドレスの場合は IFA_F_PERMANENT に適用される。ユーザーによってセットされるフラグと、 undocumented なフラグがある。

属性
rta_type値の型説明

IFA_UNSPEC-指定されていない
IFA_ADDRESSraw protocol addressインターフェースアドレス
IFA_LOCALraw protocol addressローカルアドレス
IFA_LABELasciiz stringインターフェースの名前
IFA_BROADCASTraw protocol addressブロードキャストアドレス
IFA_ANYCASTraw protocol addressanycast アドレス
IFA_CACHEINFOstruct ifa_cacheinfoアドレス情報
RTM_NEWROUTE, RTM_DELROUTE, RTM_GETROUTE
ネットワーク経路の情報を生成・削除・取得する。 これらのメッセージは rtmsg 構造体を伴う。そのあとにいくつかの rtattr 構造体を続けることもできる。 RTM_GETROUTErtm_dst_lenrtm_src_len に 0 をセットすると、 指定されたルーティングテーブルの全てのエントリを所得する。 rtm_tablertm_protocol 以外の他のフィールドに 0 を入れると、ワイルドカードを意味する。

struct rtmsg {
    unsigned char rtm_family;   /* Address family of route */
    unsigned char rtm_dst_len;  /* Length of destination */
    unsigned char rtm_src_len;  /* Length of source */
    unsigned char rtm_tos;      /* TOS filter */
    unsigned char rtm_table;    /* Routing table ID */
    unsigned char rtm_protocol; /* Routing protocol; see below */
    unsigned char rtm_scope;    /* See below */
    unsigned char rtm_type;     /* See below */
    unsigned int  rtm_flags;
};
rtm_type経路のタイプ

RTN_UNSPEC未知の経路
RTN_UNICASTゲートウェイまたはダイレクトな経路
RTN_LOCALローカルインターフェースの経路
RTN_BROADCAST ローカルなブロードキャスト経路 (ブロードキャストとして送信される)
RTN_ANYCAST ローカルなブロードキャスト経路 (ユニキャストとして送信される)
RTN_MULTICASTマルチキャスト経路
RTN_BLACKHOLEパケットを捨てる経路
RTN_UNREACHABLE到達できない行き先
RTN_PROHIBITパケットを拒否する経路
RTN_THROW経路探索を別のテーブルで継続
RTN_NATネットワークアドレスの変換ルール
RTN_XRESOLVE 外部レゾルバを参照 (実装されていない)
rtm_protocol経路の情報源

RTPROT_UNSPEC不明
RTPROT_REDIRECT ICMP リダイレクトによる (現在は用いられない)
RTPROT_KERNELカーネルによる
RTPROT_BOOTブート時
RTPROT_STATIC管理者による

RTPROT_STATIC よりも大きな値はカーネルによって解釈されない。これは 単なるユーザーへの情報である。これらは経路情報の情報源を タグ付けしたり、複数のルーティングデーモンからの情報を 区別するために用いることができる。 既に割り当てられているルーティングデーモンの識別子については <linux/rtnetlink.h> を見よ。

rtm_scope は行き先への距離である。

RT_SCOPE_UNIVERSEグローバルな経路
RT_SCOPE_SITE ローカルな自律システムにおける内部経路
RT_SCOPE_LINKこのリンク上の経路
RT_SCOPE_HOSTローカルホスト上の経路
RT_SCOPE_NOWHERE行き先が存在しない

ユーザーは RT_SCOPE_UNIVERSERT_SCOPE_SITE の間の値を用いることができる。

rtm_flags は以下の意味を持つ:

RTM_F_NOTIFY 経路が変更されると、 rtnetlink を通してユーザーに通知が行く。
RTM_F_CLONED経路は他の経路によって複製された。
RTM_F_EQUALIZEマルチパスイコライザ (まだ実装されていない)

rtm_table ではルーティングテーブルを指定する。

RT_TABLE_UNSPEC指定されていないルーティングテーブル
RT_TABLE_DEFAULTデフォルトのテーブル
RT_TABLE_MAINメインのテーブル
RT_TABLE_LOCALローカルテーブル

ユーザーは RT_TABLE_UNSPECRT_TABLE_DEFAULT. の間の任意の値を用いることができる。

属性
rta_type値の型説明

RTA_UNSPEC-無視される
RTA_DSTprotocol address経路の行き先アドレス
RTA_SRCprotocol address経路の発信元アドレス
RTA_IIFint入力インターフェースの index
RTA_OIFint出力インターフェースの index
RTA_GATEWAYprotocol address経路のゲートウェイ
RTA_PRIORITYint経路の優先度
RTA_PREFSRC
RTA_METRICSint経路のメトリック
RTA_MULTIPATH
RTA_PROTOINFO
RTA_FLOW
RTA_CACHEINFO

(これらの値を埋めること!)

RTM_NEWNEIGH, RTM_DELNEIGH, RTM_GETNEIGH
近傍テーブル (neighbor table) のエントリ (例えば ARP エントリ) の情報を追加・削除・取得する。 このメッセージは ndmsg 構造体を伴う。

struct ndmsg {
    unsigned char ndm_family;
    int           ndm_ifindex;  /* Interface index */
    __u16         ndm_state;    /* State */
    __u8          ndm_flags;    /* Flags */
    __u8          ndm_type;
};
struct nda_cacheinfo {
    __u32         ndm_confirmed;
    __u32         ndm_used;
    __u32         ndm_updated;
    __u32         ndm_refcnt;
};

ndm_state は以下の状態のビットマスクである:

NUD_INCOMPLETE現在レゾルブ中のキャッシュエントリ
NUD_REACHABLE動作確認済みのキャッシュエントリ
NUD_STALE期限切れのキャッシュエントリ
NUD_DELAYタイマ待ちのキャッシュエントリ
NUD_PROBE再確認中のキャッシュエントリ
NUD_FAILED不正なキャッシュエントリ
NUD_NOARP行き先キャッシュのないデバイス
NUD_PERMANENT静的なエントリ

有効な ndm_flags は以下の通り:

NTF_PROXYプロクシ arp エントリ
NTF_ROUTERIPv6 ルータ

rtattr 構造体は、 rta_type フィールドに応じてそれぞれ以下の意味を持つ:

NDA_UNSPEC未知のタイプ
NDA_DST近傍キャッシュネットワーク層の行き先アドレス
NDA_LLADDR近傍キャッシュリンク層のアドレス
NDA_CACHEINFOキャッシュの統計

rta_type フィールドが NDA_CACHEINFO の場合には、 struct nda_cacheinfo ヘッダが続く。

RTM_NEWRULE, RTM_DELRULE, RTM_GETRULE
ルーティングルールを追加・削除・取得する。 struct rtmsg を伴う。
RTM_NEWQDISC, RTM_DELQDISC, RTM_GETQDISC
キューイングルールを追加・削除・取得する。 このメッセージは struct tcmsg を伴い、またそのあとに属性がいくつか続くこともある。

struct tcmsg {
    unsigned char    tcm_family;
    int              tcm_ifindex;   /* interface index */
    __u32            tcm_handle;    /* Qdisc handle */
    __u32            tcm_parent;    /* Parent qdisc */
    __u32            tcm_info;
};
属性
rta_type  値の型  説明

TCA_UNSPEC  -  指定されていない
TCA_KIND  asciiz string  キューイングルールの名前
TCA_OPTIONS  byte sequence  Qdisc 特有のオプションが続く
TCA_STATS  struct tc_stats  Qdisc の統計
TCA_XSTATS  qdisc-specific  モジュール特有の統計
TCA_RATE  struct tc_estimator  レート制限

さらに、 qdisc モジュール特有の様々な属性を指定できる。 詳細な情報は適切なインクルードファイルを見よ。

RTM_NEWTCLASS, RTM_DELTCLASS, RTM_GETTCLASS
トラフィッククラスを追加・削除・取得する。 これらのメッセージは、上述の struct tcmsg を伴う。
RTM_NEWTFILTER, RTM_DELTFILTER, RTM_GETTFILTER
トラフィックフィルターの情報を追加・削除・取得する。 これらのメッセージは、上述の struct tcmsg を伴う。

バージョン

rtnetlink は Linux 2.2 の新機能である。

バグ

このマニュアルは完全ではない。

この文書について

この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.65 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。