書式
qtool.pl [options] target_directory source [source ...]qtool.pl [-d|-b] [options] source [source ...]
説明
qtool は sendmail が使用するキューファイルをキューディレクトリ間で移動する。 sendmail と同じロック機構を使うので、 sendmail が稼働している間も安全に使用できる。オプションが指定されていない場合、 qtool は source で指定された全てのキューファイルを ディレクトリ target_directory に移動する。 source は、キュー制御ファイル・キューファイルの ID・ キューディレクトリのどれでもよい。
-d オプションが指定された場合、qtool は source で指定されたメッセージを 移動ではなく削除する。
-b オプションが指定された場合、選択されたメッセージは -OTimeout.queuereturn=now オプションをつけた sendmail を実行することにより バウンスされる (送信者に送り返される)。
オプション
- -b
 - source で指定された全てのメッセージをバウンスする。 メッセージはすぐにバウンスされる。 メッセージの配送を試みない。
 - -C configfile
 - sendmail の設定ファイルを指定する。 デフォルトは /etc/mail/sendmail.cf である。
 - -d
 - source で指定された全てのメッセージを削除する。
 - -e perl_expression
 - source で指定されたキューファイルについて、 perl_expression を評価する。 perl_expression が真と評価された場合、そのキューファイルは移動される。 perl_expression の詳細については、下記を参照すること。
 - -s seconds
 - source で指定されたキューファイルのうち 修正時刻が seconds 秒より前のものだけを移動する。
 
Perl 表現
このプログラムでは Perl 表現を使うことができる。 Perl 表現の中では、キューに入れられたメッセージのデータだけでなく、 制御ファイルのフィールドの内容を含むハッシュにもアクセスできる。 ハッシュは %msg という名前である。 フィールドに複数の値がある ('Recipient' のような) 場合、 値は配列として返される。 値が 1 つの場合、値はスカラーで返される。 ハッシュ %msg を使って、以下の値にアクセスすることができる。- auth
 - AUTH= パラメータ。
 - body_type
 - ボディタイプ (8BITMIME, 7BIT, または未定義)。
 - body_last_mod_time
 - ボディが最後に修正された時刻。紀元年 (epoch) から秒数で表す。
 - body_size
 - ボディファイルのサイズ (バイト単位)。
 - charset
 - 文字セット (将来使用するためにある)。
 - content-length
 - Content-Length: ヘッダー値 (Solaris の sendmail のみ)。
 - controlling_user
 - 制御しているユーザー。
 - control_last_mod_time
 - 制御ファイルが最後に修正された時刻。紀元年 (epoch) から秒数で表す。
 - control_size
 - 制御ファイルのサイズ (バイト単位)。
 - creation_time
 - 制御ファイルが生成された時刻。
 - data_file_name
 - データファイル名 (使わない方が良い)。
 - envid
 - ESMTP で送られてきたオリジナルのエンベロープの ID。
 - error_recipient
 - エラーの場合の受信者 (使わない方が良い)。
 - flags
 - 
以下の値を持つことできる文字配列。
- 
- w
 - 警告メッセージが送信された。
 - r
 - エラー応答、または DSN。
 - 8
 - ボディに 8 ビットのデータがある。
 - b
 - Bcc: ヘッダーを削除する。
 - d
 - エンベロープに DSN RET= パラメータがある。
 - n
 - ボディを返さない。
 
 
 - 
 - headers
 - これは Perl のハッシュで、rfc822 フィールド名をキー、 rfc822 フィールド値を値にしている。 フィールドに 1 つしか値がない場合、値は文字列として返される。 ('Received' のように) フィールドに 2 つ以上の値がある場合、 値は文字列のリストとして返される。
 - inode_number
 - データ (ボディ) ファイルの i ノード番号。
 - next_delivery_time
 - 次の配送が試みられる最も早い時刻。
 - num_delivery_attempts
 - 配送を試みた回数。
 - macro
 - 定義されたマクロ。
 - message
 - エンベロープ状態のメッセージ。
 - original_recipient
 - 本来の受信者 (ORCPT= パラメータ)。
 - priority
 - 変更されたメッセージの優先度。
 - recipient
 - 
コロンと受信者名が後に続く文字フラグの配列。フラグを以下に示す。
- 
- N
 - NOTIFY= パラメータがある。
 - S
 - 要求した DSN が成功した。
 - F
 - 要求した DSN が失敗した。
 - D
 - 要求した DSN が遅れている。
 - P
 - (alias または forward で展開される前の) 元々のアドレス。
 
 
 - 
 - sender
 - 送信者。
 - version
 - 制御ファイルのバージョン。
 
例
- qtool.pl q2 q1
 - キューディレクトリ q1 にあるキューファイルを キューディレクトリ q2 に移動する。
 - qtool.pl q2 q1/d6CLQh100847
 - キューディレクトリ q1 にある ID が d6CLQh100847 のメッセージを キューディレクトリ q2 に移動する。
 - qtool.pl q2 q1/qfd6CLQh100847
 - キューディレクトリ q1 にある ID が d6CLQh100847 のメッセージを キューディレクトリ q2 に移動する。
 - qtool.pl -e '$msg{num_delivery_attempts} == 3' /q2 /q1
 - 今までに 3 回配送が試みられた全てのキューファイルを キューディレクトリ q1 から q2 に移動する。
 
バグ
sendmail 8.12 では、メッセージの qf ファイルと df ファイルを 別々のキューに格納することができる。 この場合、qtool には df ファイルのパス名ではなく、 qf ファイルのパス名を指定しなければならない。 安全のため、絶対に qtool に df ファイルのパス名を指定してはならない。履歴
qtool コマンドは sendmail 8.10 で登場した。

