書式
#include <malloc.h>
void *(*__malloc_hook)(size_t size, const void *caller);
void *(*__realloc_hook)(void *ptr, size_t size, const void *caller);
void *(*__memalign_hook)(size_t alignment, size_t size,
const void *caller);
void (*__free_hook)(void *ptr, const void *caller);
void (*__malloc_initialize_hook)(void);
void (*__after_morecore_hook)(void);
説明
GNU C ライブラリでは、適切なフック関数 (hook function) を指定することで malloc(3), realloc(3), free(3) の動作を変更することができる。例えば、動的にメモリ割り当てを行う プログラムのデバッグにこれらのフックを使うことができる。変数 __malloc_initialize_hook は malloc の実装が初期化される際に一度だけ呼ばれる関数へのポインタである。 この変数は書き換え可能 (weak) であり、アプリケーション内で 以下のような定義で上書きできる:
void (*__malloc_initialize_hook)(void) = my_init_hook;なお、関数 my_init_hook() で全てのフックの初期化をすることができる。
__malloc_hook, __realloc_hook, __memalign_hook, __free_hook で指される 4 つの関数は、各々 malloc(3), realloc(3), memalign(3), free(3) とよく似たプロトタイプを持っているが、 一番最後の引き数 caller をとる点が異なる。 引き数 caller には、 malloc(3) などの呼び出し元 (caller) のアドレスが格納される。
変数 __after_morecore_hook は、領域の追加要求があり sbrk(2) が呼ばれた後で毎回呼び出される関数へのポインタである。
準拠
これらの関数は GNU による拡張である。注意
マルチスレッドプログラムでは、 これらのフック関数の使用は安全ではなく、 今では非推奨である。 プログラマは、 "malloc" や "free" のような関数を定義して公開して、 関連する関数を呼び出すようにすべきである。例
これらの変数の使い方の簡単な例を以下に示す。
#include <stdio.h> #include <malloc.h> /* 使おうとするフックのプロトタイプ宣言 */ static void my_init_hook(void); static void *my_malloc_hook(size_t, const void *); /* 元々のフックを保存するための変数 */ static void *(*old_malloc_hook)(size_t, const void *); /* C ライブラリから呼ばれる初期化フックを上書きする */ void (*__malloc_initialize_hook) (void) = my_init_hook; static void my_init_hook(void) { old_malloc_hook = __malloc_hook; __malloc_hook = my_malloc_hook; } static void * my_malloc_hook(size_t size, const void *caller) { void *result; /* 元々のフックを全て戻す */ __malloc_hook = old_malloc_hook; /* malloc の再帰的呼び出し */ result = malloc(size); /* 現在設定されているフック (underlying hook) を保存する */ old_malloc_hook = __malloc_hook; /* printf() は malloc() を呼び出す可能性があるので ここでもガードを行う (元々のフックのままにしておく) */ printf("malloc(%u) called from %p returns %p\n", (unsigned int) size, caller, result); /* ユーザが使おうとするフックを再設定する */ __malloc_hook = my_malloc_hook; return result; }
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.65 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。